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院長コラム:風邪(1)

風邪(1)

風邪は内科・小児科の外来では最もよくみる疾患の1つだと思います。しかし、我々医師は医学生や研修医の頃に風邪について学ぶ機会は殆どありません。また内科で研修を受けても風邪について系統立てて勉強する機会は少ないようです。今月から数回に分けて風邪について説明していきたいと思います。

そもそも風邪とは何でしょうか?
一般的には「自然寛解するウイルス感染症で、多くは鼻症状(鼻汁・鼻閉)・咽頭症状(咽頭痛・腫脹)・胸部症状(咳・痰)などの複数の臓器症状を呈する疾患」と説明できます。世の中には腸感冒といっておなかの風邪とも呼ばれる疾患もありますが、ここでは上気道(のど~胸)に限局するものを風邪と呼ぶ事と致します。

右のイラストのように鼻症状咽頭症状胸症状の全てが急性に出現し、なおかつ発熱していた場合には風邪と呼んでいただいて全く問題ありません。急性に症状が出現したという事も大事なポイントです。

アレルギーなどは似たような症状がおこることはあっても発熱はありませんし、慢性に症状が経過することが特徴になります。

風邪はウイルス感染ですので、多領域(多臓器)にわたって症状を出すことが一般的です。ウイルスと間違われやすい細菌感染の場合には原則的に単一臓器に1種類の菌が感染することが一般的です。

院長コラム:風邪(1)

なぜこのような面倒くさい話をするかというと、「風邪には抗生物質」という妄想がちまたにあふれています。私の父などもズブの素人ですが、風邪症状があった私に「抗生物質を飲んだら?」と平気で言ってきます。風邪はウイルス感染ですから、細菌をやっつける抗生物質を飲んでも役に立つことは少ないものです。日本では諸外国に比べて風邪症状に抗生物質を出す頻度が明らかに多く、耐性菌(抗生物質が効かなくなった菌)が問題化している現状において、不必要な抗生物質の投与は避けた方がいいと思います。もちろん状況によっては抗生物質をだすことが良いと判断されるケースもありますので、絶対に出してはいけないというものでもありません。