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院長コラム:腰痛について(1)

腰痛について(1)

腰痛は日本人の訴える症状(有訴率)では一番多い症状で、生涯において日本人の8割以上が腰痛を訴えます。二本足で歩く人間にとって腰痛は宿命的な病気とも言われています。背骨は25個の椎骨(ついこつ)が連結し、それを周囲の靭帯・筋肉・椎間板・関節などが支えています。いわば積み木細工のように不安定でゆがみやすい構造になっているわけです。ことに腰は上半身の重さを支え、さまざまな動作の基点ともなるために腰痛をおこしやすいのです。

院長コラム:腰痛について(1)

2003年の全国調査では、腰痛患者さんは男性では年齢の上昇で割合は増加しませんが、女性では70歳代に急激に患者さんが増加しています。

腰痛は症状であって、診断名ではありません。なぜ腰痛がおきているかを判断することは実は大変難しいことです。「ギックリ腰」のように名前は大変有名だけれども、その病態は全くといっていいほど解明されていない腰痛もたくさんあり、臨床医泣かせです。では腰痛で受診された患者さんは医療機関で何という診断を受けているのでしょうか?日本整形外科学会の調査では下記のような診断をうけていらっしゃるようです。

(1)原因不明 23.9% (6)椎間板ヘルニア 5.9%
(2)腰痛症 20.0% (7)捻挫・打撲 5.5%
(3)坐骨神経痛 12.0% (8)変形性腰椎症 4.0%
(4)その他 11.3% (9)分離・すべり症 3.3%
(5)異常なし 6.9% (10)骨粗鬆症 2.7%

このように、腰痛を訴える患者さんに対して様々な診断が各医療機関で行われているのが現状ですが、腰痛患者さんの85%は原因が特定できず、原因が特定できるものは全体の15%程度だと言われています。実際の問題として原因がはっきりしない腰痛が大半で、診断名を確定させることの方が明らかに少ないのが現状です。しかし、全国調査では診断名が確定しているものが多く見られています。これは診断名を患者さんに伝えることによって、症状の原因を説明し、患者さんの不安を鎮める作用があるために名目的に診断名をつけているという側面からだと思われます。