池田脳神経外科TOP > 院長コラム:新型インフルエンザについて
新型インフルエンザについて
2009年4月メキシコに端を発したブタ由来新型インフルエンザ(H1N1)の流行は世界に拡がり、社会に大きな影響を与えています。福岡県では2009年5月25日に米国人旅行者の初感染が確認され、その後小学生~高校生を中心に患者さんが増えています。 新聞、テレビなどのマスコミ報道があまりにもセンセショーナルだっただけに、一般の人々の中にも新型=重症という考え方が当初からありましたが、初感染から約半年をすぎて色々な事がわかってきました。
- 患者さんの好発年齢は高校生以下が主体で、19歳以下が全体の80%を占めている。
- 新型でも従来のインフルエンザ治療薬であるタミフル・リレンザが有効である。
- 致死率は季節性よりも低く、日本では0.001%程度、世界全体でも0.045%とされている。
- 基礎疾患を持たない健常者の重症化例が6割を越えている。
- 小児のインフルエンザ脳症の割合は季節性より多い。
健康な小児や青壮年の新型インフルエンザによる突然の死亡はマスコミが取り上げる材料としては、インパクトが大きく、社会への不安を増長させます。しかし、現実問題として我々医療者側の判断は通常の季節性インフルエンザと大差ないと考えて対応しております。
新型インフルエンザワクチンにつきましても新聞・テレビなどで報道されていますように接種するスケジュールが医療従事者、妊婦、基礎疾患、幼児、小学生というように段階的に決まっております。地域によっては乳幼児への接種を前倒ししている地域もあるために、現場では非常に混乱しております。当院でも1日あたり少なくとも10件以上の問い合わせがあり、受付での対応も大変です。
まず、皆様に知ってもらいたいことは、あくまで新型インフルエンザワクチンは感染を予防するものでは決してないということです。感染した場合に重症化を防ぐ可能性があるということだけです。これは季節性のインフルエンザワクチンも同様で、感染予防の役割はありません。
ただし現状では新型、季節性ともにインフルエンザワクチンは準備が殆どありません。当院では入荷した段階で接種する人を優先順位を考慮して接種している状況です。診療所によっては少し余裕がある施設もあると思いますが、概ねどこの施設でも同じような状況だと思われます。
冬を迎えると、感染者が増える可能性があります。また、新型だけでなく例年の季節性インフルエンザの流行も懸念されます。高齢者は季節性に比較すると新型インフルエンザに罹患する可能性は少ないようですが、症状だけでは季節性も新型も区別することはできません。
普段から予防に心がけ、38℃を越える発熱があれば早めに医療機関に受診されることをお勧め致します。