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てんかんについて(5)
今回からはてんかんの薬物治療について説明していきます。
てんかん発作が1度でもおこれば、必ずお薬による治療を始めるかと言えば決してそういうわけではありません。1度てんかんをおこした患者さんの5年以内のてんかん発作出現率は約35%と言われており、約2/3の患者さんはてんかん発作の再発がないまま過ごします。そのために1度てんかん発作をおこしても経過観察することが一般的です。
ただし、画像所見や脳波所見での明らかな異常があるケースや、てんかんの家族歴がある場合には再発率が高いことが知られているので、そのような場合には1度のてんかん発作でもお薬による治療を開始することもあります。
1回だけでなく、その後2回目のてんかん発作をおこした場合は1年以内の再発率が73%と明らかに高いために、お薬による治療が必要です。また65歳以上の高齢者では1回目のてんかん発作をおこした後の再発率が66~90%と非常に高いために1回目の発作後からお薬による治療を開始することが多いようです。
当院でもてんかんをおこされた患者さんには、上記のような方針でお薬による治療を開始するわけですが、やはり中には治療の同意を得られずに経過観察していくことも稀にあります。高齢者であれば比較的に受け入れやすいようですが、若年者であれば病名に対する違和感や就職・結婚・車の運転免許や女性であれば妊娠・出産などについても不安を訴えられます。何よりも長期間にわたって薬の内服が必要なことなどが大きな原因のようです。
しかし幸いなことにてんかんの治療開始時期とその後の経過については、初回発作、2回目の発作、5回目の発作とそれぞれの時期でお薬による治療を開始しても、患者さんのその後の経過については大きな変化はないという報告があります。そのような事も説明しながら根気よく理解を深めるようにしています。